クイズの全国リーグ『プレAQL』、市川尚志会長へのインタビュー第2回です。
第1回、および日本経済新聞様のサイトもあわせてお読み頂ければ幸いです。

――前回に引き続き、AQLの地方自治についてです。(前回取り上げた)東北・東京東部以外のリーグではいかがでしたか?

こちらから声をかけない形の、完全立候補でリーグを成立させた北関東も素晴らしかったと思います。教育機関の説得や会場確保でかなり苦労したようでしたが、最後は高校チームに4チームもご参加いただきました。いろいろご尽力いただいた石原優吾君の頑張りが大きかったと思います。
いずれにしても、各地の運営に際しては開催方式などを全国側から押し付けることをしないように注意しました。「地域リーグのルール・開催方式は地域が決める。全国側が決めるのは代表枠だけで、あとはひな形となるシステムを例示するだけ」がAQLの基本です。地域のクイズ事情は、地域の人しかわかりません。ここに、必要以上の押し付けがないようにすることが大事だと思って運用してきました。逆に、全地域を制御しようとしたら、全国運営側の身が持たないと思います(笑)。

北関東リーグ設立に尽力した石原優吾君。なお「苦い人生」の「苦さ」はホップのことだそうです(「志賀高原ビール」限定Tシャツ)。

――まさに「地域自治」ということですね。AQL以外にも、他のイベントと組み合わせた事例もありました。
信州リーグでは翌日に『地域の最強位/新人王』を開催し、2日連続で参加された方も多かったです(参考記事)。

そうですね。信州はもちろんのこと、他にも多くの地域で自主的な工夫が目立ちました。
私が担当した埼玉では、浦和高校の長野大樹君ら高校生有志を中心に『埼玉ジュニア新人戦』が運用されましたし、東海リーグではこちらの記事にあるように、高校生たちによる自立した運営が目立ちました。東京西部と九州がコラボして、ビギナー向け個人戦を企画した動きも素晴らしかったですね。集客面で苦戦した北海道や中国四国も、その参加チーム数に適した開催スタイルを提示していただきました。
語りだしたら各地のエピソードは止まりませんが、とにかくこれらはあくまで地域リーグが自主的に企画したものです。「クイズ」はどうしてもテレビなどだと「答える」側面が重視されがちですが、こうして各人が考えながら「問題を作る」「企画を作る」「運営する」ということができる点はクイズの大きな魅力のひとつだと思いますし、そこを高校生以下も含めた参加者たちに委ねているのがAQLの大きな特徴だと思っています。

――高校生たちのクイズを作るバイタリティは素晴らしいし、それをAQLの中で引き出せたのも良かったと思います。
さて、今回高校生以下の「ジュニアの部」を創設するにあたり、学校側の協力が不可欠だったと思いますが、そのあたりはいかがですか?

今回、基本は「苦戦する」と予想していて、予想通り学校側の説得がうまくいかないケースもいくつかありました。ですが、それぞれの状況に合わせて対応することで、何とか最悪の状況(「参加したい」と応募してきたのに参加できないチームが発生すること)だけは避けられたと思っています。もちろん、われわれの見えないところで学校の許可が取れず参加を断念した学校もあるでしょうから、こういったところは中長期的に解決していきたいと思っています。
その一方で、われわれの活動をご理解・支持頂いた教育機関も複数ありました。学校によっては、会場として学校をご提供していただいたり、会場までバスを手配していただいたりもした学校もあり、本当に感謝です。
AQLは「全国50以上のクイズ愛好団体の支持を受けた執行体制で運用を進めていること」「それを示す会則を明示していること」「総会の議事録をオープンな形で公開していること」「安全対策を明示したこと」など、通常のクイズ大会よりガバナンスや情報公開、安全対策に気を使って運用してきたわけですが、教育機関などを説得していくにあたり、こういったことの重要性をあらためて感じました。内輪でクイズをしていると、こういうところは“なあなあ”にしがちですが、「この組織が何たるか」「安全に配慮しているか」をきちんと透明化することは、外から見て重要ですよね。

一般の部優勝の一橋大学。東京西部リーグは九州とコラボし、ビギナー向け新人戦を開催した。

――その他、開催において苦労した点や課題はありましたか?

課題は山ほどありますが、苦労した点として真っ先に挙げられるのは、「地域の高校生たちとのネットワーク作り」ですね。AQLの地域代表メンバーは20代~40代。さすがに高校生たちとは疎遠な年代であり、どのようにコンタクトを取っていいか難しい一面がありました。

特に最も苦戦したのが「日程調整」ですね。「中間期末テスト」「一斉模試」「学校行事」、そして「高校生以下が企画するTwitterのみで告知される有志例会」など、高校生なら当たり前に知りえる情報を、われわれは簡単に知りえないわけです。これにさらに「(皆さんの都合のいい日に)複数部屋の会場が取れるか」という課題も絡まるわけです。例えば埼玉や東海などは、地域の高校以下のオピニオンリーダー(?)ともいえる面々と、事前にコンタクトを取り調整がうまくいきましたが、日程調整がうまくいかなかった地域も多数ありました。
そんな中、例えば関西リーグでは、次回以降に向け中高生向けの例会を別途開催してコネクションを作る取り組みを始めるなどのポジティブな取り組みもスタートしています。
このあたりの基盤になるのは「適切なコミュニケーション」でしょう。とりあえずここを読んでAQLに参加したいという高校生以下の皆様、ぜひ加盟団体としてご登録頂き、日程調整だけでも事前にご協力頂けると助かります!

他にも、若い面々との事前のスタッフ連絡をどのようにするかですね。例えば東北リーグ。最初メールでやりとりをしていたのですが、代表の佐々木君から「高校生同志はLINEでの連絡が一番やりやすい」という提案を受け、LINEグループを作ってもらいました。これが大ヒットで、細かな事務連絡はもちろん、問題修正についてのコメントなどのやり取りも気軽に行うことができました。LINEというのは一例ですが(LINEが嫌いな人もいるでしょうし・笑)、やりやすい運営のコミュニケーション方法は、各地域の状況に合わせて工夫の余地があると思いました。

次回は大会の形式についてお伺いします!

【文責:神野芳治】

https://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2018/04/IMG_0461-1024x682.jpghttps://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2018/04/IMG_0461-150x150.jpgquizdo“やる”クイズリポートイベントリポートクイズの全国リーグ『プレAQL』、市川尚志会長へのインタビュー第2回です。 第1回、および日本経済新聞様のサイトもあわせてお読み頂ければ幸いです。 ――前回に引き続き、AQLの地方自治についてです。(前回取り上げた)東北・東京東部以外のリーグではいかがでしたか? こちらから声をかけない形の、完全立候補でリーグを成立させた北関東も素晴らしかったと思います。教育機関の説得や会場確保でかなり苦労したようでしたが、最後は高校チームに4チームもご参加いただきました。いろいろご尽力いただいた石原優吾君の頑張りが大きかったと思います。 いずれにしても、各地の運営に際しては開催方式などを全国側から押し付けることをしないように注意しました。「地域リーグのルール・開催方式は地域が決める。全国側が決めるのは代表枠だけで、あとはひな形となるシステムを例示するだけ」がAQLの基本です。地域のクイズ事情は、地域の人しかわかりません。ここに、必要以上の押し付けがないようにすることが大事だと思って運用してきました。逆に、全地域を制御しようとしたら、全国運営側の身が持たないと思います(笑)。 ――まさに「地域自治」ということですね。AQL以外にも、他のイベントと組み合わせた事例もありました。 信州リーグでは翌日に『地域の最強位/新人王』を開催し、2日連続で参加された方も多かったです(参考記事)。 そうですね。信州はもちろんのこと、他にも多くの地域で自主的な工夫が目立ちました。 私が担当した埼玉では、浦和高校の長野大樹君ら高校生有志を中心に『埼玉ジュニア新人戦』が運用されましたし、東海リーグではこちらの記事にあるように、高校生たちによる自立した運営が目立ちました。東京西部と九州がコラボして、ビギナー向け個人戦を企画した動きも素晴らしかったですね。集客面で苦戦した北海道や中国四国も、その参加チーム数に適した開催スタイルを提示していただきました。 語りだしたら各地のエピソードは止まりませんが、とにかくこれらはあくまで地域リーグが自主的に企画したものです。「クイズ」はどうしてもテレビなどだと「答える」側面が重視されがちですが、こうして各人が考えながら「問題を作る」「企画を作る」「運営する」ということができる点はクイズの大きな魅力のひとつだと思いますし、そこを高校生以下も含めた参加者たちに委ねているのがAQLの大きな特徴だと思っています。 ――高校生たちのクイズを作るバイタリティは素晴らしいし、それをAQLの中で引き出せたのも良かったと思います。 さて、今回高校生以下の「ジュニアの部」を創設するにあたり、学校側の協力が不可欠だったと思いますが、そのあたりはいかがですか? 今回、基本は「苦戦する」と予想していて、予想通り学校側の説得がうまくいかないケースもいくつかありました。ですが、それぞれの状況に合わせて対応することで、何とか最悪の状況(「参加したい」と応募してきたのに参加できないチームが発生すること)だけは避けられたと思っています。もちろん、われわれの見えないところで学校の許可が取れず参加を断念した学校もあるでしょうから、こういったところは中長期的に解決していきたいと思っています。 その一方で、われわれの活動をご理解・支持頂いた教育機関も複数ありました。学校によっては、会場として学校をご提供していただいたり、会場までバスを手配していただいたりもした学校もあり、本当に感謝です。 AQLは「全国50以上のクイズ愛好団体の支持を受けた執行体制で運用を進めていること」「それを示す会則を明示していること」「総会の議事録をオープンな形で公開していること」「安全対策を明示したこと」など、通常のクイズ大会よりガバナンスや情報公開、安全対策に気を使って運用してきたわけですが、教育機関などを説得していくにあたり、こういったことの重要性をあらためて感じました。内輪でクイズをしていると、こういうところは“なあなあ”にしがちですが、「この組織が何たるか」「安全に配慮しているか」をきちんと透明化することは、外から見て重要ですよね。 ――その他、開催において苦労した点や課題はありましたか? 課題は山ほどありますが、苦労した点として真っ先に挙げられるのは、「地域の高校生たちとのネットワーク作り」ですね。AQLの地域代表メンバーは20代~40代。さすがに高校生たちとは疎遠な年代であり、どのようにコンタクトを取っていいか難しい一面がありました。 特に最も苦戦したのが「日程調整」ですね。「中間期末テスト」「一斉模試」「学校行事」、そして「高校生以下が企画するTwitterのみで告知される有志例会」など、高校生なら当たり前に知りえる情報を、われわれは簡単に知りえないわけです。これにさらに「(皆さんの都合のいい日に)複数部屋の会場が取れるか」という課題も絡まるわけです。例えば埼玉や東海などは、地域の高校以下のオピニオンリーダー(?)ともいえる面々と、事前にコンタクトを取り調整がうまくいきましたが、日程調整がうまくいかなかった地域も多数ありました。 そんな中、例えば関西リーグでは、次回以降に向け中高生向けの例会を別途開催してコネクションを作る取り組みを始めるなどのポジティブな取り組みもスタートしています。 このあたりの基盤になるのは「適切なコミュニケーション」でしょう。とりあえずここを読んでAQLに参加したいという高校生以下の皆様、ぜひ加盟団体としてご登録頂き、日程調整だけでも事前にご協力頂けると助かります! 他にも、若い面々との事前のスタッフ連絡をどのようにするかですね。例えば東北リーグ。最初メールでやりとりをしていたのですが、代表の佐々木君から「高校生同志はLINEでの連絡が一番やりやすい」という提案を受け、LINEグループを作ってもらいました。これが大ヒットで、細かな事務連絡はもちろん、問題修正についてのコメントなどのやり取りも気軽に行うことができました。LINEというのは一例ですが(LINEが嫌いな人もいるでしょうし・笑)、やりやすい運営のコミュニケーション方法は、各地域の状況に合わせて工夫の余地があると思いました。 次回は大会の形式についてお伺いします! 【文責:神野芳治】クイズに興味を持った方・初心者の方からベテランまで! ”やる”クイズ支援サイト