編集長・神野も関わったクイズの全国リーグ『プレAQL』。3月17日に全国大会が終わり、全国12カ所での開催が終了しました。
参加団体数107、参加人数869人は、いずれも過去アマチュアクイズ界最大規模。「全国のクイズ団体が一丸となり運営する」「地域で予選を行い、全国大会を行う」という、アマチュアクイズ大会ではやれそうでできなかったAQLの取り組みについて、今回はAQLの発起人にして会長である市川尚志さんにインタビューを行いました。
市川さんは過去に『abc』『新人王/早押王』など、現在もクイズ界で長く続く大会の立ち上げに携わり、現在は「クイズイベント支援団体『新・一心精進』」の代表として、全国のクイズクリエイターの大会開催支援を行っています。また、以前紹介したクイズダウンロードサイト『クイズの杜』の管理者でもあります(参考記事:クイズの杜「地域・経験・人脈関係なくアクセスできる共通問題の存在は、自由な形でクイズが普及していく上で重要だと常々感じてます」)。

市川さんのAQLについてのインタビューは日本経済新聞様のサイトにも掲載されておりますが、『Quiz Do』では日経にはマニアックすぎて載せられなかった部分も含め、市川さんのクイズへの考え方を、思う存分語っていただきました。

――まずはプレAQLの開催、お疲れ様でした。プレAQLの11の予選大会および全国大会を終えての、会長としての感想をお聞かせください。

何より「楽しかった」というのが最初の感想です。自分は直接行けた会場は埼玉リーグ、東北リーグ、東京東部リーグの3リーグと全国だけでしたが、数多くのクイズプレイヤーの熱気と、「楽しみたい」という雰囲気を感じ取ることができました。
このような全国のクイズ愛好家が一体となる取り組みは、現在のクイズの世界では数少ない例であり、大変なことも多数ありましたが、クイズを盛り上げるため、そしてみんなの笑顔のために、われわれが信じる方法で自由に取り組みを進められたことが何よりでした。
各大会に関わったスタッフ・参加者など、全ての方に御礼申し上げたいです。

プレAQLジュニアの部優勝の旭丘高校(左)に、AQL会長の市川さん(右)から賞状が渡される。

――全国11か所で地域リーグが実施された一方、「なぜこの地区で開催しないのか?」など、「開催地区に偏りがあるのでは?」という意見も中にはありました。このあたり、会長としては率直にどうでしょうか?

まず、地域の偏りについて申し上げると、「地域自治を大前提としたら、結果的に自然発生したもの」というのが私の認識です。私としては、AQLは「立候補による地域自治」が大前提と考えています。
AQLは、こちらから“上から目線”で「こうやってAQLを開催させなさい」ではなく、「AQLを開催したい地域に立候補してもらい、各地域の責任で運用してもらう」という形を取りました。もちろん、各地域のクイズ普及の中心ともいえる方々に個人的には声掛けをしましたが、無理にやってもらっても仕方ないということだけは常に意識しました。クイズ普及の方法はAQLだけではないですし。
ですから、地域の偏りは「自然にこうなった」というだけであって、意図的なものはありません。しかし、最終的には各地域の意思によって、全国11カ所、ほとんどの地域を埋める形に至ったのは素晴らしかったと思っています。もちろん、開催密度という観点では偏りはありましたが、自主的な動きでここまで持ってこられたのは、各地域の皆さんの後押しがあってこそでした。
来年以降、「楽しそうだから、より狭い地域でもう1リーグを作りたい」など、義務でない形で取り組みが広がっていけばいいな、と思っています。

――特に東北からは、高校生の佐々木洸輔君が代表として立候補しました。(参考記事:東北リーグ編・高校生による立ち上げ:「僕が今までやったことのなかった『チーム戦でのクイズ』をやりたかった」

そうですね。空白地になりかけた東北で、高校生の佐々木君が立候補してくれたのは感激しました。
高校生に代表を務めてもらうということに異論がある方はいると思いますが、私はクイズにもクイズクリエイターにも年齢は関係ないと思っていますし、彼はクイズ大会を成功させるうえで最も大事な「パッション」を持っていました。
もちろん、全国的には大人が主導する組織である以上、安全面で責任を取る人がいないといけないとは思っていましたし、大規模な大会を高校生だけで仕切るのはやはり難しいものです。その点も東北の地元社会人サークル『フェニックス』や、そのメンバーである松田智潮君など、地元の方の協力が得られました。

高校生ながら東北リーグ設立に尽力した佐々木君ら仙台第一高校(左)にも、特別賞として賞状が贈呈された。

――佐々木君の思いが、地元の大人たちを巻き込んだということですね。

そうですね。東北リーグ運営で皆さんに紹介したいエピソードとして、早押し機の話があります。
今回、東北では10端子以上の早押し機が2台必要な企画が予定されており、「東北クイズ愛好会フェニックスの10端子以上の早押し機」「仙台一高(8端子)と仙台二高(8端子)を組み合わせて使う早押し機」の2台を使うことを想定していましたが、「仙台一高(8端子)と仙台二高(8端子)」には、同じ作者のボタンでも互換性がないことが開催直前になってわかったのです。
ところが、当日朝に使えないことが判明した場で、東北大OBの奥山智朗君(見学)が「(前日夜24時の飲み会でこの状況を聞き)こういうことがあるかもと思って、東北大から1台予備機を持ってきました」と自主的に予備機を提供してくれたのです。
きっと、問題にならない限り、申し出ないつもりで黙っていたんだと思うのです。本当に、「高校生たちのやりたいことを支える大人」として、理想すぎる振る舞いだったんじゃないかと思っていて、感激しました。

――本当にすごい気遣いですね。高校生たちをうまく陰ながら支えるというのは、大人と高校生の適度な距離感が必要ですよね。

ですね。東京東部リーグでは、伊沢拓司君の発案で行われた「当日の初心者向けクイズ」のスタッフを、東京西部の若手や、埼玉の高校生の有志にお手伝いいただきました。伊沢君の言葉を借りると、「中高生の普及活動を最も上手にできるのは、世代の近い中高生」だと思いますので、その意味で理想的でした。その後、これをきっかけに東京の高校生と埼玉の高校生がネットクイズの定期交流を始めたと聞いています。
もちろん、「みんなのためにクイズを準備・企画し、交流すること自体が楽しい」という中高生に、自らの希望で手伝ってもらうことが大前提です。強引にやらせたら、「学生の労働力酷使」になりますからね(笑)。

次回も引き続き「AQLの地域自治」についてお伺いします。

【文責:神野芳治】

https://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2018/04/IMG_0321-1024x682.jpghttps://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2018/04/IMG_0321-150x150.jpgquizdo“やる”クイズリポートイベントリポート編集長・神野も関わったクイズの全国リーグ『プレAQL』。3月17日に全国大会が終わり、全国12カ所での開催が終了しました。 参加団体数107、参加人数869人は、いずれも過去アマチュアクイズ界最大規模。「全国のクイズ団体が一丸となり運営する」「地域で予選を行い、全国大会を行う」という、アマチュアクイズ大会ではやれそうでできなかったAQLの取り組みについて、今回はAQLの発起人にして会長である市川尚志さんにインタビューを行いました。 市川さんは過去に『abc』『新人王/早押王』など、現在もクイズ界で長く続く大会の立ち上げに携わり、現在は「クイズイベント支援団体『新・一心精進』」の代表として、全国のクイズクリエイターの大会開催支援を行っています。また、以前紹介したクイズダウンロードサイト『クイズの杜』の管理者でもあります(参考記事:クイズの杜「地域・経験・人脈関係なくアクセスできる共通問題の存在は、自由な形でクイズが普及していく上で重要だと常々感じてます」)。 市川さんのAQLについてのインタビューは日本経済新聞様のサイトにも掲載されておりますが、『Quiz Do』では日経にはマニアックすぎて載せられなかった部分も含め、市川さんのクイズへの考え方を、思う存分語っていただきました。 ――まずはプレAQLの開催、お疲れ様でした。プレAQLの11の予選大会および全国大会を終えての、会長としての感想をお聞かせください。 何より「楽しかった」というのが最初の感想です。自分は直接行けた会場は埼玉リーグ、東北リーグ、東京東部リーグの3リーグと全国だけでしたが、数多くのクイズプレイヤーの熱気と、「楽しみたい」という雰囲気を感じ取ることができました。 このような全国のクイズ愛好家が一体となる取り組みは、現在のクイズの世界では数少ない例であり、大変なことも多数ありましたが、クイズを盛り上げるため、そしてみんなの笑顔のために、われわれが信じる方法で自由に取り組みを進められたことが何よりでした。 各大会に関わったスタッフ・参加者など、全ての方に御礼申し上げたいです。 ――全国11か所で地域リーグが実施された一方、「なぜこの地区で開催しないのか?」など、「開催地区に偏りがあるのでは?」という意見も中にはありました。このあたり、会長としては率直にどうでしょうか? まず、地域の偏りについて申し上げると、「地域自治を大前提としたら、結果的に自然発生したもの」というのが私の認識です。私としては、AQLは「立候補による地域自治」が大前提と考えています。 AQLは、こちらから“上から目線”で「こうやってAQLを開催させなさい」ではなく、「AQLを開催したい地域に立候補してもらい、各地域の責任で運用してもらう」という形を取りました。もちろん、各地域のクイズ普及の中心ともいえる方々に個人的には声掛けをしましたが、無理にやってもらっても仕方ないということだけは常に意識しました。クイズ普及の方法はAQLだけではないですし。 ですから、地域の偏りは「自然にこうなった」というだけであって、意図的なものはありません。しかし、最終的には各地域の意思によって、全国11カ所、ほとんどの地域を埋める形に至ったのは素晴らしかったと思っています。もちろん、開催密度という観点では偏りはありましたが、自主的な動きでここまで持ってこられたのは、各地域の皆さんの後押しがあってこそでした。 来年以降、「楽しそうだから、より狭い地域でもう1リーグを作りたい」など、義務でない形で取り組みが広がっていけばいいな、と思っています。 ――特に東北からは、高校生の佐々木洸輔君が代表として立候補しました。(参考記事:東北リーグ編・高校生による立ち上げ:「僕が今までやったことのなかった『チーム戦でのクイズ』をやりたかった」) そうですね。空白地になりかけた東北で、高校生の佐々木君が立候補してくれたのは感激しました。 高校生に代表を務めてもらうということに異論がある方はいると思いますが、私はクイズにもクイズクリエイターにも年齢は関係ないと思っていますし、彼はクイズ大会を成功させるうえで最も大事な「パッション」を持っていました。 もちろん、全国的には大人が主導する組織である以上、安全面で責任を取る人がいないといけないとは思っていましたし、大規模な大会を高校生だけで仕切るのはやはり難しいものです。その点も東北の地元社会人サークル『フェニックス』や、そのメンバーである松田智潮君など、地元の方の協力が得られました。 ――佐々木君の思いが、地元の大人たちを巻き込んだということですね。 そうですね。東北リーグ運営で皆さんに紹介したいエピソードとして、早押し機の話があります。 今回、東北では10端子以上の早押し機が2台必要な企画が予定されており、「東北クイズ愛好会フェニックスの10端子以上の早押し機」「仙台一高(8端子)と仙台二高(8端子)を組み合わせて使う早押し機」の2台を使うことを想定していましたが、「仙台一高(8端子)と仙台二高(8端子)」には、同じ作者のボタンでも互換性がないことが開催直前になってわかったのです。 ところが、当日朝に使えないことが判明した場で、東北大OBの奥山智朗君(見学)が「(前日夜24時の飲み会でこの状況を聞き)こういうことがあるかもと思って、東北大から1台予備機を持ってきました」と自主的に予備機を提供してくれたのです。 きっと、問題にならない限り、申し出ないつもりで黙っていたんだと思うのです。本当に、「高校生たちのやりたいことを支える大人」として、理想すぎる振る舞いだったんじゃないかと思っていて、感激しました。 ――本当にすごい気遣いですね。高校生たちをうまく陰ながら支えるというのは、大人と高校生の適度な距離感が必要ですよね。 ですね。東京東部リーグでは、伊沢拓司君の発案で行われた「当日の初心者向けクイズ」のスタッフを、東京西部の若手や、埼玉の高校生の有志にお手伝いいただきました。伊沢君の言葉を借りると、「中高生の普及活動を最も上手にできるのは、世代の近い中高生」だと思いますので、その意味で理想的でした。その後、これをきっかけに東京の高校生と埼玉の高校生がネットクイズの定期交流を始めたと聞いています。 もちろん、「みんなのためにクイズを準備・企画し、交流すること自体が楽しい」という中高生に、自らの希望で手伝ってもらうことが大前提です。強引にやらせたら、「学生の労働力酷使」になりますからね(笑)。 次回も引き続き「AQLの地域自治」についてお伺いします。 【文責:神野芳治】クイズに興味を持った方・初心者の方からベテランまで! ”やる”クイズ支援サイト