クイズの全国リーグ『プレAQL』、市川尚志会長へのインタビュー、いよいよ最終回です。
第1回第2回第3回および日本経済新聞様のサイトもあわせてお読み頂ければ幸いです。

――さて、AQLの開催に際し、市川さんなりにテーマがあったら教えてください。

ここでは3つのテーマに沿って話を進めたいと思います。「分断された世代・地域をつなぐこと」「継続」「クイズ界最大の普及活動」の3つです。

――大きなテーマが並びましたね。では、まず「分断された世代・地域をつなぐこと」からお願いします。

近年、地方でも都市圏でもクイズ研究会が盛んで、お互いネットなどで情報が伝わることが増えています。それがプラスに働くこともあれば、不公平感を募らせる、という意味でマイナスになることもあります。
クイズ研が少ない地方の方は「関東は、人も大会も多くてズルい」、関東や関西などの都市圏の方は「地方の人はわれわれが作った大会・問題を一方的に享受するだけ」──。自分が知っている範囲では、こんな不毛な水掛け論を見聞きすることが多くなってきたように思います。
世代に関しても同様に、「今のベテランは……」「今の学生は……」というような不満を聞くことがあります。

――自分は「見聞き」はしないのですが、そういう不満が底に流れているのは、地方在住・アラフォー世代として若干感じます。

今回のAQLのテーマのひとつは「分断された世代・地域をつなぐこと」であり、そのアプローチとして今、自分がベストと考えたのがAQLだったということです。世代間・地域間を批判しあっても仕方ありません。社会人・学生がお互い、地域を超えて問題を出し合う場を通じて、地域の分断・世代の分断を解消していくことをあらためてやっていく……そのタイミングが「今」だと感じました。

今回は「持ち寄り団体戦」というアプローチでしたが、もしその時の分断をつなぐ目的にふさわしいものが違っていたら、また違ったことをしていたんだと思います。パズルとか発想系、モノシリ問題(『mono-series~クイズNo.1物知り決定戦 & ”知”の持ち寄りパーティー~』で出題されるような「クイズでは難易度が高いが、その分野では知名度が高い」問題)とか、アプローチは多数あったと思っていますが、たまたまこの形だったということです。

決勝地が東京であることは他の地域の皆さまには申し訳ないのですが、いずれ決勝地を他の場所に変えたり、あるいはスポンサーをうまく獲得して交通費を出せるようにしたりといった工夫ができてくると嬉しいですね。

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さまざまな地域・世代の人が問題を出し合うのがAQL。

――続いて、「継続」について意識されたことをお聞かせください。

今回、全国展開にあたり、前述の「コバトンナイン方式」を提示させていただきました。
これまでさまざまなクイズ大会開催側に関わらせていただきましたが、自分が開催した中では、この「コバトンナイン方式」が最も「参加者の満足度÷主催トップ側の負担」の係数が高かったように思っています。継続した活動をやっていくにあたって、この係数の高い活動を重視していくことが大事で、逆にトップ側(地域トップなども含む)が過剰に疲弊することだけは、最もあってはならないことだと思っています。
とはいっても、今まで経験がない方式を全国展開するわけで、第1回の開催ハードルは高いのは仕方ないと思っていますし、実際に地域によっては「主催で全問題用意する方式の方が楽だったかも」という感想も出てきています。地域代表として頑張っていただいた皆様には本当に感謝です。

――大会の完成度はもちろん上がった方がいいですが、ローコストで継続を意識することも大事ですね。では最後、「クイズ界最大の普及活動」について。

これも私の意見ですが、テレビクイズが大幅になくなった今、ここ十数年のクイズ界発の最大規模の“草の根普及活動”は、「文化祭と新歓活動(サークルの勧誘活動、社会人サークルであれば新規会員の受け入れ)」だったと思っています。これらは年1万人以上(推定)の人にさまざまなクイズを体験していただく普及システムとして確立されていると思います。
もちろん、「高校生クイズ」「クイズマジックアカデミー」「Answer×Answer」「ナナマルサンバツ」「東大王」など、外部の動きがキッカケなのは言うまでもないですが、ここまでのクイズの世界が自立自営で新しい人を獲得しながら盛り上がってこられた大きな要因は、草の根の「文化祭と新歓活動」があってこそだった……と私は思っています。今クイズの盛り上がりを享受しているわれわれは、文化祭や新歓活動を頑張ってくれている学生さんや社会人サークルに本当に感謝しないといけないと思っています。

そこからドリルダウンしていくと、「クイズを楽しみながら、文化祭や新歓活動などのクイズをきちんと仕切れる団体がたくさん設立されること」がとても重要ということだと私は考えています。言うなれば、「与えられたクイズに答えられるだけでなく、きちんと企画ができる」人・団体が増えていく……ことです。
AQLは、地域交流と相互出題を通じて、「サークルがクイズを作る活力」につながればと思って運営しています。これが、間接的に「文化祭と新歓活動」という最大規模の普及活動につながればと思っています。もちろん、繰り返しになりますが、他の普及活動の方法があって良いと思います。

ジュニア向けに用意された賞状。「学校に説明する上で、賞状の存在がありがたかった」という声もあった。

――最後に、今後のAQLについての展望を教えてください。

われわれは大きな一発の打ち上げ花火をあげたくてAQLを1回だけやったわけではありません。「継続」を意識して立ち上げたものですから、どのような形になるかはわかりませんが、できる限り「継続」するものにしていきたいと思っています。

AQLは現在、世界45か国に展開するクイズの世界団体IQAの日本支部「Japan Quizzing Association(JQA)」様と共に開催する方向で検討しております。これは、JQA様が自由なクイズの尊重を掲げており、われわれの理念と一致することはもちろん、JQA様と共に開催することが教育機関や企業などに説明する際にメリットがあるからと判断したためですが、今後は各リーグと話し合いながら方向を決めていきたいと考えております。

そしてAQL2018からは、「AQL加盟団体」を明確に募集します。
リーグ構成を作り日程調整をする「実務面」、外部へアピールする際の「広報面」、いずれを踏まえても加盟団体を明確化した方が良いと判断したためです。本当はクイズの自由さを考えると、「統括」に近いことは避けたかったのですが、やはりクイズを社会へアピールする意味では避けては通れない道だと、現在は判断しています。
詳細は公式サイトをご覧いただきたいですが、基本「5人以上集まれば」加盟が可能です。全国の、「中高生」「大学生」「社会人」を含む、全てのクイズ団体の皆さま、ぜひともわれわれと共にAQLを作りませんか?

……と、ここまで威勢のいい話が多くなりましたが、その一方で、仕事の合間に手弁当で行う大会としての限界だったのも事実であります。AQL運営に絡んでいるほとんどの人はクイズを仕事にしているわけではないので、そういったメンバーが片手間でできる範囲の現実的なワーク量になることも決して忘れてはいけません。
今回、全国の中心スタッフがややオーバーワーク気味だったことを踏まえ、次回AQL2018は「全国大会なし」でひと休みをする方向で考えています。希望する地域のみで地域リーグを開催し、地域の取り組みを実施していただく形です。
次回の全国大会は少しの充電を経て、2019年夏に『AQL2019』として行うことを、今のところ考えています。

AQL今後の構想はこちら(pdf)です。

AQLの本番はこれからです。全国の「“やる”クイズ」「“つくる”クイズ」を愛する皆さまと共に、クイズを盛り上げていきましょう!

――ありがとうございました!

【文責:神野芳治】

https://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2018/04/IMG_0162-1024x682.jpghttps://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2018/04/IMG_0162-150x150.jpgquizdo“やる”クイズリポートイベントリポートクイズの全国リーグ『プレAQL』、市川尚志会長へのインタビュー、いよいよ最終回です。 第1回、第2回、第3回および日本経済新聞様のサイトもあわせてお読み頂ければ幸いです。 ――さて、AQLの開催に際し、市川さんなりにテーマがあったら教えてください。 ここでは3つのテーマに沿って話を進めたいと思います。「分断された世代・地域をつなぐこと」「継続」「クイズ界最大の普及活動」の3つです。 ――大きなテーマが並びましたね。では、まず「分断された世代・地域をつなぐこと」からお願いします。 近年、地方でも都市圏でもクイズ研究会が盛んで、お互いネットなどで情報が伝わることが増えています。それがプラスに働くこともあれば、不公平感を募らせる、という意味でマイナスになることもあります。 クイズ研が少ない地方の方は「関東は、人も大会も多くてズルい」、関東や関西などの都市圏の方は「地方の人はわれわれが作った大会・問題を一方的に享受するだけ」──。自分が知っている範囲では、こんな不毛な水掛け論を見聞きすることが多くなってきたように思います。 世代に関しても同様に、「今のベテランは……」「今の学生は……」というような不満を聞くことがあります。 ――自分は「見聞き」はしないのですが、そういう不満が底に流れているのは、地方在住・アラフォー世代として若干感じます。 今回のAQLのテーマのひとつは「分断された世代・地域をつなぐこと」であり、そのアプローチとして今、自分がベストと考えたのがAQLだったということです。世代間・地域間を批判しあっても仕方ありません。社会人・学生がお互い、地域を超えて問題を出し合う場を通じて、地域の分断・世代の分断を解消していくことをあらためてやっていく……そのタイミングが「今」だと感じました。 今回は「持ち寄り団体戦」というアプローチでしたが、もしその時の分断をつなぐ目的にふさわしいものが違っていたら、また違ったことをしていたんだと思います。パズルとか発想系、モノシリ問題(『mono-series~クイズNo.1物知り決定戦 & '知'の持ち寄りパーティー~』で出題されるような「クイズでは難易度が高いが、その分野では知名度が高い」問題)とか、アプローチは多数あったと思っていますが、たまたまこの形だったということです。 決勝地が東京であることは他の地域の皆さまには申し訳ないのですが、いずれ決勝地を他の場所に変えたり、あるいはスポンサーをうまく獲得して交通費を出せるようにしたりといった工夫ができてくると嬉しいですね。 ――続いて、「継続」について意識されたことをお聞かせください。 今回、全国展開にあたり、前述の「コバトンナイン方式」を提示させていただきました。 これまでさまざまなクイズ大会開催側に関わらせていただきましたが、自分が開催した中では、この「コバトンナイン方式」が最も「参加者の満足度÷主催トップ側の負担」の係数が高かったように思っています。継続した活動をやっていくにあたって、この係数の高い活動を重視していくことが大事で、逆にトップ側(地域トップなども含む)が過剰に疲弊することだけは、最もあってはならないことだと思っています。 とはいっても、今まで経験がない方式を全国展開するわけで、第1回の開催ハードルは高いのは仕方ないと思っていますし、実際に地域によっては「主催で全問題用意する方式の方が楽だったかも」という感想も出てきています。地域代表として頑張っていただいた皆様には本当に感謝です。 ――大会の完成度はもちろん上がった方がいいですが、ローコストで継続を意識することも大事ですね。では最後、「クイズ界最大の普及活動」について。 これも私の意見ですが、テレビクイズが大幅になくなった今、ここ十数年のクイズ界発の最大規模の“草の根普及活動”は、「文化祭と新歓活動(サークルの勧誘活動、社会人サークルであれば新規会員の受け入れ)」だったと思っています。これらは年1万人以上(推定)の人にさまざまなクイズを体験していただく普及システムとして確立されていると思います。 もちろん、「高校生クイズ」「クイズマジックアカデミー」「Answer×Answer」「ナナマルサンバツ」「東大王」など、外部の動きがキッカケなのは言うまでもないですが、ここまでのクイズの世界が自立自営で新しい人を獲得しながら盛り上がってこられた大きな要因は、草の根の「文化祭と新歓活動」があってこそだった……と私は思っています。今クイズの盛り上がりを享受しているわれわれは、文化祭や新歓活動を頑張ってくれている学生さんや社会人サークルに本当に感謝しないといけないと思っています。 そこからドリルダウンしていくと、「クイズを楽しみながら、文化祭や新歓活動などのクイズをきちんと仕切れる団体がたくさん設立されること」がとても重要ということだと私は考えています。言うなれば、「与えられたクイズに答えられるだけでなく、きちんと企画ができる」人・団体が増えていく……ことです。 AQLは、地域交流と相互出題を通じて、「サークルがクイズを作る活力」につながればと思って運営しています。これが、間接的に「文化祭と新歓活動」という最大規模の普及活動につながればと思っています。もちろん、繰り返しになりますが、他の普及活動の方法があって良いと思います。 ――最後に、今後のAQLについての展望を教えてください。 われわれは大きな一発の打ち上げ花火をあげたくてAQLを1回だけやったわけではありません。「継続」を意識して立ち上げたものですから、どのような形になるかはわかりませんが、できる限り「継続」するものにしていきたいと思っています。 AQLは現在、世界45か国に展開するクイズの世界団体IQAの日本支部「Japan Quizzing Association(JQA)」様と共に開催する方向で検討しております。これは、JQA様が「自由なクイズの尊重」を掲げており、われわれの理念と一致することはもちろん、JQA様と共に開催することが教育機関や企業などに説明する際にメリットがあるからと判断したためですが、今後は各リーグと話し合いながら方向を決めていきたいと考えております。 そしてAQL2018からは、「AQL加盟団体」を明確に募集します。 リーグ構成を作り日程調整をする「実務面」、外部へアピールする際の「広報面」、いずれを踏まえても加盟団体を明確化した方が良いと判断したためです。本当はクイズの自由さを考えると、「統括」に近いことは避けたかったのですが、やはりクイズを社会へアピールする意味では避けては通れない道だと、現在は判断しています。 詳細は公式サイトをご覧いただきたいですが、基本「5人以上集まれば」加盟が可能です。全国の、「中高生」「大学生」「社会人」を含む、全てのクイズ団体の皆さま、ぜひともわれわれと共にAQLを作りませんか? ……と、ここまで威勢のいい話が多くなりましたが、その一方で、仕事の合間に手弁当で行う大会としての限界だったのも事実であります。AQL運営に絡んでいるほとんどの人はクイズを仕事にしているわけではないので、そういったメンバーが片手間でできる範囲の現実的なワーク量になることも決して忘れてはいけません。 今回、全国の中心スタッフがややオーバーワーク気味だったことを踏まえ、次回AQL2018は「全国大会なし」でひと休みをする方向で考えています。希望する地域のみで地域リーグを開催し、地域の取り組みを実施していただく形です。 次回の全国大会は少しの充電を経て、2019年夏に『AQL2019』として行うことを、今のところ考えています。 AQL今後の構想はこちら(pdf)です。 AQLの本番はこれからです。全国の「“やる”クイズ」「“つくる”クイズ」を愛する皆さまと共に、クイズを盛り上げていきましょう! ――ありがとうございました! 【文責:神野芳治】クイズに興味を持った方・初心者の方からベテランまで! ”やる”クイズ支援サイト