電子書籍について・最終回は、「問題集を販売する側」にとっての電子書籍のメリット・デメリットについて。
今回も表でざざっと説明していきますね。

ご説明するのは、『mono-series』などの問題集を電子書籍で販売している橙武者ことQuiz Do編集長・神野です。
電子書籍の販売サイトにはこちらよりリンクを貼っておりますので、ご参考まで! 

【販売する側にとって~電子書籍、紙(通販)、紙(直売)の比較~】

電子書籍 紙(通販) 紙(直売)
在庫のスペース ○全く必要ない。 ○全く必要ない(通販サイトが在庫する)。 ×在庫スペースが必要。
販売の手間 ○一度アップロードすれば全く手間がない。 ○一度委託すれば全く手間がない。 ×サークル・イベントに重い問題集を持っていき、対面で販売する手間が必要。
利益はいつ入るか(人件費は度外視) ○1冊売った時点で利益が出る。 ×一定数売れないと、損益分岐点は超えない(発行部数の1/2前後+販売委託料?)。 ×一定数売れないと、損益分岐点は超えない(発行部数の1/2前後?)。
販売手数料は必要か △DL Marketの場合、定価・決済方法によって異なるが、定価の「20~30%」。 △業者によって異なるが、定価の「20~30%」。 ○必要なし。
料金はいつ入ってくるか △DL Marketの場合、月末〆で、翌月16日。 △業者によって異なるが、月末〆の翌月10~31日。 ○販売した時点。
ミスが見つかったとき修正版を出せるか ○すぐに修正版を出せる。 ×印刷したものを売り切るまでは修正版を出しにくい。 ×印刷したものを売り切るまでは修正版を出しにくい。
販売量 ×正直、まだ「電子書籍で問題集を買う」人は少数派……。 △だいぶ定着はしてきたが、直売に比べれば劣る印象。 ○やはり「直接その場で売る」のが、販売量としては一番多い。

とにかく電子書籍と通販は販売者にとって楽、ですね。在庫のスペースは全く必要ない、一度アップロードor委託さえしてしまえばあとは全部お任せ、一定部数売れて料金が振り込まれるのを待つだけ……。一方で紙の問題集を直売しようとすると、当然いろんな手間がかかります。一番の手間は「問題集を持っていくのがとにかく重い!!」ということで、これを痛感した人も多いんじゃないかなあと思います。段ボール1箱1箱の重いこと重いこと……。

で、「売る手間が必要ない」メリットはもともと想定していましたが、電子書籍を売ってみて想定していなかったポイント。それは「1冊でも売れれば利益になる」ということです。
紙の問題集の印刷費は当然ながら前払いです。ページ数や発行部数にもよりますが、たとえばB5・単色・60ページのよくある問題集を300部作るとして、栄光の早期割引で61,400円。原価204.7円/冊です。これを600円で売ると、直売だけで人件費度外視すると102冊売ったところでようやく利益が出ることになる。もちろん通販に回すと手数料がかかる(30%として180円/冊)ので、それだけ利益が出る冊数(損益分岐点、ということです)は増えてしまいます。

*ちなみに脱線しますが、上記条件の原価は200部→261.5円/冊、300部→204.7円/冊、400部→188.3円/冊、500部→177.0円です。と「200部と300部の差はかなり大きいけど、300部以上になるとだいぶ差が縮まる」ことがわかります。個人的には「300部作ってみたら」と勧めることが多いのはこれが理由です。ただ、スペースはとりますし、あちこち行商に行く必要はありますが……。

以前はPDFを作成するのに専用のソフトが必要でしたが、今はWordもExcelも簡単にPDFを作成することが可能です。上のメニューバー一番右の「ファイル」から、上の画像のアイコンを選んでみてください。

一方、電子書籍は、編集の人件費を除けば「コストは0円」です。DL Marketで売れたら、後日「手数料20~30%を差し引かれて振り込まれる」ということになります。つまり「赤字になることがない!」ということです。これは完全に目から鱗でした。それまで「あと何冊売れれば黒字化、あと何冊売れれば黒字化……」ってプレッシャーありましたもん(笑)。

「売る手間は少ない」「1冊売れれば利益になる」、いいことづくめのような電子書籍ですが、現状大きな欠点があります。それは「販売数量がまだ少ない」ということです(涙)。僕の個人問題集『progris riport 06』の話をすると、DL Marketで売ったのはわずか30冊程度です(別ルートでも後述の通り売っていますが)。経験上、あちこちの大会で直売すれば多分200冊くらいは売れたと思いますので、もうこれは「(涙)レベル」じゃなくて「(号泣)レベル」ですね……。

【解決策:「電子書籍のアドレス・パスワードを、イベントなどで直売する」やり方】

で、「電子書籍のメリットを生かしながら」「より販売数量を増やす」手として、最近増えてきているのが、「電子書籍のアドレス・パスワードを、イベントなどで直売する」という方法です。先駆者はおそらく松本裕輔さんで、僕もこのやり方をとっており、上記『progris riport 06』もこのやり方で100冊近く販売しています。゛逆に言うと、このやり方で100冊売ってしまったからこそ、電子書籍ではまだ売れないのかもしれない……。

メリットとしては「直接売るので販売量が増える」「手数料を払う必要がない(紙の印刷代はかかりますが、手数料に比べれば得)」「問題集を持っていくのに比べればはるかに軽い」「DL Marketに登録しなくても、Dropboxなどにアップロードすればいいので出すのが気楽」なこと。
デメリットは「イベントに行かないと売れない・買えない」「売る手間がかかる」ことではありますが、もしイベントに定期的に行って、売る手間をかけてもいいというのであればかなりいい手だと思います。

なお、アドレスについては「手打ちしてもらう」か、「別途どこかにリンクを貼っておく(検索やリンク集で出やすいところにする必要あり)」やり方があります。前者の場合は入力の手間があるのですが、以前とある問題集で「100文字近く入力させる」ものがあると聞いて苦笑いしたことがあります。「bit.ly」などの短縮サービスを使うと購入者にとっても楽ですので、ご参考まで!

……と、4回にわたり電子書籍について触れてきました。
まだまだ黎明期であり、取り扱いされている問題集の種類・販売量ともにまだまだ、というのが正直なところです。ただ、読者からすれば「誰もが」「いつでも」「どこでも」買える、販売者からすれば「ローコストで」「手間なく」売れる、という点で非常にメリットがあると思います。紙の問題集とうまく共存する形で、電子書籍の問題集がもっと広まってほしい、と思っています!

【文責:神野芳治】

https://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2017/09/books4.jpghttps://quiz-schedule.info/quizdo/wp-content/uploads/2017/09/books4-150x150.jpgquizdo問題電子書籍サイト電子書籍について・最終回は、「問題集を販売する側」にとっての電子書籍のメリット・デメリットについて。 今回も表でざざっと説明していきますね。 ご説明するのは、『mono-series』などの問題集を電子書籍で販売している橙武者ことQuiz Do編集長・神野です。 電子書籍の販売サイトにはこちらよりリンクを貼っておりますので、ご参考まで!  【販売する側にとって~電子書籍、紙(通販)、紙(直売)の比較~】 電子書籍 紙(通販) 紙(直売) 在庫のスペース ○全く必要ない。 ○全く必要ない(通販サイトが在庫する)。 ×在庫スペースが必要。 販売の手間 ○一度アップロードすれば全く手間がない。 ○一度委託すれば全く手間がない。 ×サークル・イベントに重い問題集を持っていき、対面で販売する手間が必要。 利益はいつ入るか(人件費は度外視) ○1冊売った時点で利益が出る。 ×一定数売れないと、損益分岐点は超えない(発行部数の1/2前後+販売委託料?)。 ×一定数売れないと、損益分岐点は超えない(発行部数の1/2前後?)。 販売手数料は必要か △DL Marketの場合、定価・決済方法によって異なるが、定価の「20~30%」。 △業者によって異なるが、定価の「20~30%」。 ○必要なし。 料金はいつ入ってくるか △DL Marketの場合、月末〆で、翌月16日。 △業者によって異なるが、月末〆の翌月10~31日。 ○販売した時点。 ミスが見つかったとき修正版を出せるか ○すぐに修正版を出せる。 ×印刷したものを売り切るまでは修正版を出しにくい。 ×印刷したものを売り切るまでは修正版を出しにくい。 販売量 ×正直、まだ「電子書籍で問題集を買う」人は少数派……。 △だいぶ定着はしてきたが、直売に比べれば劣る印象。 ○やはり「直接その場で売る」のが、販売量としては一番多い。 とにかく電子書籍と通販は販売者にとって楽、ですね。在庫のスペースは全く必要ない、一度アップロードor委託さえしてしまえばあとは全部お任せ、一定部数売れて料金が振り込まれるのを待つだけ……。一方で紙の問題集を直売しようとすると、当然いろんな手間がかかります。一番の手間は「問題集を持っていくのがとにかく重い!!」ということで、これを痛感した人も多いんじゃないかなあと思います。段ボール1箱1箱の重いこと重いこと……。 で、「売る手間が必要ない」メリットはもともと想定していましたが、電子書籍を売ってみて想定していなかったポイント。それは「1冊でも売れれば利益になる」ということです。 紙の問題集の印刷費は当然ながら前払いです。ページ数や発行部数にもよりますが、たとえばB5・単色・60ページのよくある問題集を300部作るとして、栄光の早期割引で61,400円。原価204.7円/冊です。これを600円で売ると、直売だけで人件費度外視すると102冊売ったところでようやく利益が出ることになる。もちろん通販に回すと手数料がかかる(30%として180円/冊)ので、それだけ利益が出る冊数(損益分岐点、ということです)は増えてしまいます。 *ちなみに脱線しますが、上記条件の原価は200部→261.5円/冊、300部→204.7円/冊、400部→188.3円/冊、500部→177.0円です。と「200部と300部の差はかなり大きいけど、300部以上になるとだいぶ差が縮まる」ことがわかります。個人的には「300部作ってみたら」と勧めることが多いのはこれが理由です。ただ、スペースはとりますし、あちこち行商に行く必要はありますが……。 一方、電子書籍は、編集の人件費を除けば「コストは0円」です。DL Marketで売れたら、後日「手数料20~30%を差し引かれて振り込まれる」ということになります。つまり「赤字になることがない!」ということです。これは完全に目から鱗でした。それまで「あと何冊売れれば黒字化、あと何冊売れれば黒字化……」ってプレッシャーありましたもん(笑)。 「売る手間は少ない」「1冊売れれば利益になる」、いいことづくめのような電子書籍ですが、現状大きな欠点があります。それは「販売数量がまだ少ない」ということです(涙)。僕の個人問題集『progris riport 06』の話をすると、DL Marketで売ったのはわずか30冊程度です(別ルートでも後述の通り売っていますが)。経験上、あちこちの大会で直売すれば多分200冊くらいは売れたと思いますので、もうこれは「(涙)レベル」じゃなくて「(号泣)レベル」ですね……。 【解決策:「電子書籍のアドレス・パスワードを、イベントなどで直売する」やり方】 で、「電子書籍のメリットを生かしながら」「より販売数量を増やす」手として、最近増えてきているのが、「電子書籍のアドレス・パスワードを、イベントなどで直売する」という方法です。先駆者はおそらく松本裕輔さんで、僕もこのやり方をとっており、上記『progris riport 06』もこのやり方で100冊近く販売しています。゛逆に言うと、このやり方で100冊売ってしまったからこそ、電子書籍ではまだ売れないのかもしれない……。 メリットとしては「直接売るので販売量が増える」「手数料を払う必要がない(紙の印刷代はかかりますが、手数料に比べれば得)」「問題集を持っていくのに比べればはるかに軽い」「DL Marketに登録しなくても、Dropboxなどにアップロードすればいいので出すのが気楽」なこと。 デメリットは「イベントに行かないと売れない・買えない」「売る手間がかかる」ことではありますが、もしイベントに定期的に行って、売る手間をかけてもいいというのであればかなりいい手だと思います。 なお、アドレスについては「手打ちしてもらう」か、「別途どこかにリンクを貼っておく(検索やリンク集で出やすいところにする必要あり)」やり方があります。前者の場合は入力の手間があるのですが、以前とある問題集で「100文字近く入力させる」ものがあると聞いて苦笑いしたことがあります。「bit.ly」などの短縮サービスを使うと購入者にとっても楽ですので、ご参考まで! ……と、4回にわたり電子書籍について触れてきました。 まだまだ黎明期であり、取り扱いされている問題集の種類・販売量ともにまだまだ、というのが正直なところです。ただ、読者からすれば「誰もが」「いつでも」「どこでも」買える、販売者からすれば「ローコストで」「手間なく」売れる、という点で非常にメリットがあると思います。紙の問題集とうまく共存する形で、電子書籍の問題集がもっと広まってほしい、と思っています! 【文責:神野芳治】クイズに興味を持った方・初心者の方からベテランまで! ”やる”クイズ支援サイト